激動の2020年上期の航空業界を振り返りたいと思います。
未曾有の感染症拡大影響
個人的には今年はANA/ダイヤ、デルタ/プラチナのステータスの本領を発揮すべく、積極的に海外に行く計画を立てておりました。
ところが、年初より中国武漢で原因不明の肺炎が広がっているというきな臭い話が出てきました。上海に住んでいたのでわかりますが、当時から感染者数はこんなもんではないであろう、という話でもちきりでした。案の定、春節が始まる前日、1月23日に武漢市がロックダウン。春節期間中には出国制限、加えて春節期間の延期という前代未聞の対応が続きました。出国制限が春節期間中に行われた為、既に多くの方が世界各地に出国し、結果として世界的に新型コロナウイルスが広がりました。
中国に現地法人を持つ企業の対応は様々でした。当時は中国が新型コロナの中心地であり、春節終了後も中国駐在員を戻さない企業も多かったと思います。なお、私は春節終了後に上海に戻りましたが、春節後のフライトとは思えないくらいガラガラでした。この時から、「あ、この状況は航空会社ヤバイな」と実感していました。
その後、日本に本帰国することになりましたが、その時のフライトもガラガラです。この時、CAの方から聞いたところ、翌日から大幅減便でこのフライトも運休に入る、ということでした。そして、これが2020年上期の国際線最後のフライトですが、このまま2020年の最後のフライトになることが濃厚です。
まず、多くの航空会社は中国を離発着するフライトを運休しました。この時はまだ、世界も中国だけの事象、と考えていたと思います。
ANA・JALの奇策
新型コロナウイルスによる航空需要の蒸発により、各国のエアラインは苦境に立たされます。3月頃にはデルタやユナイテッドは上級会員資格の延長を発表します。日系も追随するかと思いきや、まずANAが「1月から6月のプレミアムポイントを2倍にする」という過去にないキャンペーンを打ち出します。ANAはこれまで修行僧を毛嫌いしているという風潮がありましたが、キャッシュを稼ぐ為には背に腹は代えられない、ということか正に修行僧をターゲットにしたキャンペーンです。負けじとJALも同様の内容(厳密には少しことなりますが)で、「2月から7月」のFOPを2倍にするキャンペーンを発表しました。
しかしながら、感染防止で外出自粛が求められる中、移動を促進するような両社の施策に対し、批判の声もありました。4月に入り、緊急事態宣言が発出されると、両社ともに海外エアライン同様に上級会員資格の延長を発表。JALに関しては、社会情勢に鑑み、FOP2倍キャンペーンを期間終了を待たずに取りやめました。一方のANAは予定通り6月までキャンペーンを継続しました。これは比較的財務に余力のあるJALは社会的なイメージを優先した一方、過去に投資を続けてきて、手元キャッシュを厚くしたいANAとの差であったと言えます。
今後のエアライン業界はどうなるか
国際線に関しては需要が戻るのは2-3年と言われております。仮に自国での感染が落ち着いたとしても、感染国からの流入があればすぐに感染は広がります。「トランジット」を考えても、世界的に感染が収束した、という認識が広がらない限りは旅行は難しいでしょう。感染収束にはワクチンが前提かと思いますが、そもそもワクチンができない可能性もあるので、どこかで割り切りは必要だと思います。ワクチンがあるインフルエンザでも毎年多くの人が亡くなっており、あるウイルスを持って経済活動を止めることはもっと多くの人の生活を奪う可能性が高いです。
需要はまず国内線から徐々に戻る感じでしょうか。日本も批判はされているものの、GoToキャンペーンで国内旅行は少しずつ回復してきています。震源地の中国でも国内線需要は平時の70%程度まで回復しているようです。
一方、これまで世界一の航空会社と言われていたシンガポール航空は国内線を持たず、苦境に立たされております。政府から多額の資金調達をしており、すぐにどうこう、という状況ではないかもしれないですが、最新機材を多く所有しており、償却負担を考えると楽観はできないと思われます。個人的には大好きな航空会社であり、何とか凌いでほしいと思います。
最後に
フルサービスキャリアではタイ航空、アエロメヒコ、LATAMが、LCCもイージージェット等が破綻しています。コロナ以前から経営が危ない航空会社もありましたが、それが加速しています。コロナをきっかけに3大アライアンスの在り方も大きく変わる可能性もあり、引き続き注視していきたいと思います。